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大手メディアとの癒着・報道統制だけで存続
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「明治憲法復活、大日本帝国への回帰」が最終目的
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思いつきのカジノ法案は突っ込み所
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1%の利益のために、99%を犠牲にするからダメな経済政策
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原発は世界的に終焉へ、安倍「原子力ムラ」政権のアキレス腱
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対立軸は「日本国憲法三原則の堅持」と「99%のための政治」
安倍政権と対峙し始めて3年目、政権の浅薄な実態がはっきり見えてきた。政策はやること全てが上手く行かず、ことごとく外して失敗と言える。本稿は、政権の中身と失政を纏めて、攻め所を考察したい。外交も昨秋からのデタラメさと失敗は目を覆うばかりであり、別稿に纏めた。
安倍政権が存続している唯一の理由は、大手メディアと癒着して報道を統制し、批判させず、擁護や提灯記事ばかり書かせているためだ。テレビや新聞しか見ない人達には、失敗を感じさせないように繕っている。しかし、日本の大手メディアの狭い世界からほんの少し出るだけ、的確な批判やそれを裏付ける事実をいくらでも確認できる。自分の目で見る人には、失政ばかりである。つまり安倍政権は裸の王様である。
報道統制の結果として、高い支持率を保っているが、その支持は消極的である。TPP、原発、カジノなど個々の政策を問うと、むしろ反対が多い。批判や野党側の動きなど、他の選択肢を見せないようにしているための、消極的支持に過ぎない。世論調査の設問の設定だけで、いかようにでも変わりうる、砂上の楼閣のような危うい支持基盤である。
逆に彼らの弱みになるのは、報道をいかに統制しても国民世論がなびかないような事柄が争点になるときである。例えば、世界的に終焉がはっきり見えてきた原発は、いまや彼らのアキレス腱である。カジノも、あの自民党機関誌と呼ばれる読売新聞でさえ反対の論を張った。これらは彼らの弱点である。
自民党は2012年に発表した憲法改正草案において、非論理的で時代錯誤的な憲法観・国家観を恥ずかしげもなく披露した。日本国憲法の三原則「国民主権、基本的人権の尊重、平和主義」をも公然と否定し、時代を100年以上は逆行しようかという中身である。
この背景は(最大の支持団体である)日本会議であることが、菅野完氏の「日本会議の研究」などによって白日の下に晒された。ごく少数の生長の家原理主義者(戦前・戦中の戦争賛美宗教の信奉者)が日本会議を牛耳り、美しい国との美名の下に、「明治憲法復活、大日本帝国への回帰」を目指しているという、マンガのような実態である。安倍首相自身も、母方の祖父・岸信介の影響を受けて、正にこのような思想の持ち主である。
大日本帝国への回帰は、特定秘密保護法、武器輸出解禁、集団的自衛権行使容認、安保法制(戦争法)などの立法化として、着々と進められている。今国会では共謀罪(戦前・戦中の治安維持法かそれ以上の悪法)が、提出されようとしている。覚えのない言動が「密告」され、だれでも冤罪に陥れられる可能性が格段に高まる。政権に都合の悪い人物を、恣意的に取り締まるのが目的である。
このように恥ずかしく危険な自民党の実像は、知る人ぞ知る状況になった。政権与党に居ることが党是のような公明党でさえ、最近は引き気味である。安倍政権が解散の機会を常に伺っているのは、憲法9条の改悪にはさすがに公明党も賛成しないだろうと見て、自民党や日本維新の会の議席をさらに伸ばすのが狙いである。
カジノ法案を突然成立させたのも、(カジノ王を支持者に持つ)トランプのご機嫌伺いと共に、維新の会に擦り寄る意図である。しかしこれは世論の反発が強く、公明党をさらに遠ざける悪手であり、突っ込み所である。何ら価値を生まないカジノの経済効果はマイナスでしかなく、これが成長戦略とは笑止。99%から金を巻き上げ、1%だけが(しかも外国)儲けるという、悪い政策の見本である。
安倍政権の経済政策は、大企業、超富裕層、特権階級など1%の利益のために、大多数の国民・99%を犠牲にしている。上手く行かないのは当たり前である。消費税を上げる一方で、大企業減税をする。株価をつり上げて、1%にあからさまな恩恵を与え、かつ株取引収益には(どれほど高額でも)一律20%課税で、これは富裕層に対する実質的な減税である。
「株価つり上げ」には異常に熱心である。目先の株価さえ高ければ、支持率も上がるのを狙っている。緩和マネーのみならず、(国民の貯金である)年金基金に買わせ、さらに日銀にも大量に買わせているのだから、上がらないはずがない(左図、日経記事より)。
世界で最もひどい株価操作をしている政権である。もし株価が下がり年金に損失がでたら、年金支給を減額するだけなのだから、国民はやられ放題である。日銀の買い取り分などは、将来どうやって精算するのだろうか?
円安政策も、輸入品価格の高騰などにより、国民の8割には、つまり日本全体にはマイナスである。多くの国民を犠牲にして、一部の輸出企業を儲けさせているだけである。僅かな昇給は物価や消費税上昇に全く追いつかず、アベノミクスにより実質賃金は一気に5%も下落し、GDPの6割を占める個人消費が低迷するという不況に陥っている。「ふつうの人は貧乏にする政策」では、日本に未来はない。
成長戦略も、大企業からの要望を取り上げ、ばらまきの大義名分としているだけなのだから、何一つ有効なものはない。「女性が輝く」、「一億総活躍」とかのスローガンも、女性がSHINE(死ね)、一億総奴隷としか聞こえない。唯一、功を奏したのは観光ビザ要件の緩和で、訪日客の増加に結びついている。安倍自身は、脅威を煽りたい中国からの観光客増加は日中友好に繫がるため、実は嫌がっているのではないか。
最大の弱点は原発推進政策である。世界的に原子力発電の終焉がはっきりと見えてきた。東芝の解体から分かる通り、原発はもはや事業として成り立たたず、世界各国で建設計画が中止となり、一方で再生可能エネルギーがどんどん普及し、かつ石炭火力よりも低コストとなっている。もはや原発に拘る理由は皆無である。もし事故が起これば天文学的費用が発生する原発は、出来るだけ早く終息させることだ。
安倍政権はこの潮流に全く対応できず、いまだに原発をベース電源に据えるような時代錯誤政策を続けている。このままでは日本国民に、将来に亘って重い負担を残す可能性が高い。福一のような事故がまた起これば、日本は崩壊する。「原発は 自国に向けた 核弾頭」なのだから。
政治的に、原発は安倍政権のアキレス腱である。そもそも民主党から自民党への逆流、安倍政権の誕生自体が、「原子力ムラ」の巻き返しそのものである。3/11以降、菅政権は脱原発政策を強力に推し進めた。「原子力ムラ」は彼らの基盤が根底から揺らがされることを畏れ、直ぐに「管降ろし」で対抗する(右写真)。次には、メディアを通して民主党に強烈なネガキャンを浴びせると共に、自民党にとことん肩入れするようになった。
その急先鋒にいるのが読売新聞である。元社長・正力松太郎氏はCIAの協力者(公文書上の事実)であり、「原発の父」と呼ばれるほどの原発推進者であった。対米追随と原発推進は読売の社是のようで、自民党とぴったり一致する。読売新聞はメディアと言うより、自民党機関誌と呼ぶのが正に相応しい。政権と大手メディアの癒着は、「原子力ムラ」の結び付きそのものである。
「原子力ムラ」は1970〜2011の40年間、最低でも2兆4000億円もの原発礼賛の広告宣伝費を投じたと推定されている(本間 龍「原発プロパガンダ」)。年間600億円は、ソニー、トヨタの国内広告費(約500億円)よりも多い。この金で、メディアは容易に従属してしまう。
世界的に原発の終わりがはっきり見えてきた昨今、原発が争点になれば自民党も読売新聞も負ける。「原子力ムラ」は自らの正当性を示すことがもはや不可能である。彼らの主張は、世界中で、悉く事実としてひっくり返されている。彼らはいずれ原発と共に滅びる。原発で政権についた安倍は、原発で政権を去る。カジノは取り下げることも出来ようが、原発では彼らは引けない。核燃料サイクルや核兵器の夢も捨てられないだろう。彼らこそ原子力ムラの中心だし、彼らがずっと依って立ってきた基盤だからだ。
脱原発は、単にエネルギー政策だけではなく、日本の政治を長い間蝕んできた利権構造を根底からひっくり返すことでもある。「原子力ムラ」の片割れは、民進党内にも、連合内にもいるが、彼らには脱原発の踏み絵を踏ませるべきだ。東芝のように惨めになる前に、「原子力ムラ」から抜ける方が彼らの幸せであろう。野党が真に脱原発で固まれば、強い政治勢力になる。
安倍政権と闘うのに、たいした武器は要らない。「日本国憲法の三原則の堅持」と「99%のための政治」というだれでも賛同するはずの2大原則を掲げるだけで良い。この2つだけで、安倍政治を全否定できる。カジノは彼らの失策であり、弱点だ。それ以上に重要な争点は原発で、これは彼らのアキレス腱である。