リニアの強引無理 #15:消費エネルギー/CO2排出量比較

クリックして拡大。下部に出典と引用値(青字)をまとめ、表中の青字は引用値ないし直に計算できるものを示し、関連定数は中段にまとめた。中電の排出係数は年度ごとに変動するので、不確定要素。

結果は上画像に集約される。要点は:

・5万kWが500km/h巡航時の総消費電力(とJR東海は認識)
・3.5万kWからの増加要因に換気電力も加えれば、5万kWを説明できる
・N700系と比べ、リニアは4倍の消費電力、(定員が少ないため)7倍のCO2排出量
・リニアの環境性能は、新千歳―羽田航空便と同程度
・リニアの環境性能は、10km/Lのガソリン車にも劣り、8km/L相当

技術的な比較では、定員で割った1席1kmあたりCO2排出量が最も客観的であろう。乗車率は新幹線で60%余、航空機は80%前後(路線に依る)なので、もし考慮すればJR東海には不利になる。

新幹線の7倍もCO2を排出し、速度2倍の航空機と同程度、8Km/Lのガソリン車相当と散々である。そんなものに7兆円(インフレですでに9兆円超)も投入し、多数の住民を移転させ、水涸れで生活基盤を壊し、莫大な量のコンクリートと銅線を敷設し、完成すれば騒音と日照被害を振り撒こうとしているのである。

結論を言えば、リニアは環境性能が低すぎて、公共交通機関としての社会的意義がない。マイナスが多すぎる、反環境、反社会的事業である。

以下に、出典元から引用した数字(青太字)の意味を再確認する。引用値を認めれば、CO2排出量は単なる換算である。

● まずリニアの定員 800人は推定値で、本シリーズ #9 に根拠などを詳述している。

3.5万kW(500km/h巡航時の消費電力)はよく知られた数字であり、国交省2011の P. 7に依れば、列車のみの消費電力である。1kmあたりの消費電力は、3.5万kW/500km/h = 70kWh/kmとなる。

● 同じページに、駆動回路の損失は約17%(27/23 = 1.17)との記載がある。簡単明瞭で分かりやすい。

3.5万kWの大半は空気抵抗に起因とJR東海は説明しており、トンネル内の空気温度を上げることに費やされる。温度上昇はかなり大きく、換気が必須となる。換気電力の見積もりは、次稿 #15Aで詳しく述べるが、平均で 11.7kW/kmとなる。

下の画像は、JR東海2013の P. 7(環13–2-1)から切り出したもので、たいへん重要な2つの値がさり気なく書き込まれている:

ルートの勾配や加速を考慮すると、消費電力は約10%増える

品川―大阪間の総消費電力は 43.8MWh (= 100kWh/km)と明記している! 列車だけ見れば 3.5万kWだが、すべてを考慮すると 5万kWになると言ってるに等しい。

しかし画像の式自体は、奇妙であり、間違いと言うべきである。「停車時間を含む67分間で、平均 3.5万kW×1.1 の消費電力」という意味になり、唐突で他と整合しない。しかも、計算すれば 43.0になるのに、なぜ 43.8MWhと書いたのか?

私の解釈は、JR東海は総消費電力 43.8MWhという答えを知っていて、公表済みの 3.5万kWだけを使い、なんとか 43.8MWhを導こうとしたのであろう。この奇妙な式は、5万kWを隠すための下手な細工である。

駆動損失と加速/勾配による増加、それに換気電力を加えれば、ほぼ 100kWh/kmとなり、JR東海の値と一致した。これは偶然ではなく、100kWh/kmの内訳は(トップ画像の) 1〜4項でほぼ正解だろうと思われる。

===
「加速・勾配考慮で+10%」という記述は、大いに助かった。加速や勾配による増加分を見積もるのが、たいへん難しかったからだ。

加速に要する消費電力の最大値は、4.9万kWと試乗会のビデオから計算できる。また40パーミルの上り勾配を500km/hで走行すると、位置のエネルギーの増加分だけで 2.6万kWが必要である。詳しくは次々稿 #15Bに述べる。

これらの増加した電力は、減速時や下り坂でかなりは回収可能なはずだが、駆動ロスとなった分は決して取り戻せない。そういうややこしい計算の結果として、+10%なのであろうから、ありがたく使わせて頂いた。

先頭に戻って、結果の要点を再度見て頂きたい。リニアは「8km/Lの反エコ電車」なのである!

7/22追加:JR東海の奇妙な式の謎解き

上に「JR東海は総消費電力 43.8MWhという答えを知っていて、公表済みの 3.5万kWだけを使い、なんとか 43.8MWhを導こうとしたのであろう」と書いた。

その導き方とは、以下の通りではないか:

 


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