リニアの強引無理 #14:「CO2排出量は航空機の1/3」は捏造

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次稿 #15 で消費エネルギー/CO2排出量を比較する前に、本件を指摘しておきたい。

JR東海は、画像のように「リニアのCO2排出量は航空機の1/3」と主張している(マジェンダは筆者コメント)。多くの資料でも使用しているこの数字は、ウソ/捏造と言うべきである。

この数字を導き出すトリックは:

『長距離仕様のB777-200を比較対象とし、(本来使われない)短距離側に外挿』

JR東海試算のやり方は、この資料 の P. 8(環  13-2-2)に示されている:

5つの□印数値の出所は、EEA(欧州環境機関)HPにおいて、項目 0805 Air traffic のAnnexリンクからダウンロードできる zipファイルに含まれる、 B851vs2.3spreadsheet1.xls の B777シートである。

これは pdfとしても公表されており、B777の該当ページ(P. 47)を切り出すと:

表は11112km(6000海里)まであるが、JR東海はマジェンダで囲んだ部分のみを取り出して使っている。定員 251人、ジェット燃料の比重 0.8とすれば、5つの数字はぴったり一致する。例えば 1852kmは:

16363.8kg/1852km/251/0.8×2.46kg-CO2/L = 0.108kg-CO2/席km

EEAの表は計算値であり、長距離機に対しても機械的に短距離側の数字が記載されているが、もちろん意味はない。6000海里まであるので、このB777は明々白々に長距離仕様である。この表の短距離側だけを取り出すのは、悪意を持った捏造と言うべきである。

まともなデータとは、例えば国交省資料 P.  13にあるグラフである。右軸に、g-CO2/席kmへの換算値をマジェンダで追加した。

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リニアと比べるべきは、国内線仕様のB777-300で、約 60g-CO2/席kmである。なのにJR東海は、長距離仕様のB777-200ER相当の数値を拾い、短距離側に外挿して 177g-CO2/席kmとしている。これが航空機側を3倍悪く見せるトリックであり、捏造である。

しかも内挿線は、手書きで適当に線を引いているようにしか見えない。ちなみに筆者が、近似式として gCO2 = a + b/x  を仮定し、定数 a、bを決めると、距離 x = 548.4kmでは 0.170kg-CO2/席kmとなった。

最後に、羽田―伊丹便のCO2排出量がどれくらいになるかを試算する:

・上図から、B787-8の燃料消費率は 18.4g/席kmと読み取れる
・換算すると、56.6g-CO2/席km
・これは飛行距離 926kmの場合であり、羽田―伊丹 524kmでは悪化する。その比率は、B851vs2.3spreadsheet1.xls において、短距離仕様である B737-400の数値を用いると、+20%

従って、

56.6g-CO2/席km×1.20×524km = 35.5kg-CO2/席

主に距離の違いのために、リニアのほうが少ないが、差は3倍ではなく、数割の程度である。kmあたりで見れば、リニアのCO2排出量は航空機と同程度である。

JR東海は、このように数値を恣意的に操作する会社なので、細心の注意を払って見る必要があるという一例である。


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