リニアの強引無理 #11:耐震性低い、200galで危険域

「高速時は(>150km/h)10cmほど浮上し、案内力も強いので、地震に強い」とJR東海は主張するが、果たして実際どれくらいの地震加速度に耐えるのであろうか? 結論は表題の通りで、案内力が最も強い500km/h走行中でも、200gal超の外力でストッパー輪が側壁に接触してしまう! 

案内力は、最大で0.4G相当

クリックで拡大

2010年国交省資料 P. 28の右上図にある『左右ストッパー輪が接触する左右変位で、約12tの押し戻す力が作用』との記述に注目する。案内力(軌道の中央に戻す力)が最大でどれくらいかを、分かり易く表現している。意外に弱いというのが第一印象である。(ストッパー輪については、本シリーズ#2を参照)

12トンとは、台車1台あたり、つまり車両1台あたりと思われる。L0系改良型の中間車両の重さは25トン、乗客(定員60人)と荷物を加えて約30トンである。案内力は、最大で自重の 0.4倍ということになる。

従って「400galの横Gが掛かれば、ストッパー輪が側壁に当たる」とも、上の記述は言い直せる。

400galは、震度6弱以上ならふつうに観測される(気象庁、震度と加速度)。ちょっと大きめの揺れが来ると、金属のストッパー輪が側壁コンクリートにゴリゴリ押し付けられる訳だ。

超電導磁石4つ分の面積(~4m2)で受け止めていた荷重が、ストッパー輪とのわずかな接触面積(数cm2)に集中的に掛かる。ガイドウェイ側壁への局所的な荷重は、1万倍以上になる! こうなると、何が起きるかは分からない。

案内力は速度に比例するはずなので、500km/hで12トンは、200km/hでは4.8トン、150km/hでは3.6トンに下がる。ゆえに、200km/hでは 160gal、150km/hではわずか 120galの横Gで、ガリガリっとなる。震度5強や5弱でも、危険域に入る。条件が悪いと、耐震性はかくも低い。

モデル計算

クリックで拡大

より具体的な数字で示すべく、モデル計算を行ってみる。磁気復元力で中央位置に保たれるリニア車体を、バネ弾性力で x = 0 に保持される重り(質量M)と見なす。x = d(dは約5cm)、つまりストッパー輪が側壁に接触する位置で、復元力は最大になる。その加速度 gRは、500km/hで 400gal相当である。

磁気復元力がバネのように線形かと問えば、少し非線形なはずで、x 依存性は 1乗より大きい思われる。反発力も吸着力も距離の2乗に反比例する。しかし、x の可動範囲は磁石サイズに比べて小さいことから、x に比例と簡単化する。これは磁気復元力を「過大評価」することになる。

クリックで拡大

重りに、地震の揺れによる加速度 gQ が、t = 0 から掛かるとする。実際には、軌道が逆方向に揺さぶられる訳であるが。

モデルの運動方程式は左図 式(1)となり、その解は式(2)となる。x = d、つまりぶつかる時間 tC は式(4)、その際の速度 vC は式(5)となる。

式(4)から、gQ ≧ gR/2 ならば、tC が存在すること、すなわち接触する事がわかる。ただし gQ = gR/2 のときは、vC = 0 となる。復元力がゼロの場合は、見慣れた等加速度運動になる。

tC、vC の計算値を、gQを横軸にしてプロットしたのが、下図である。復元力が 400gal、160gal、ゼロの3つのケースを色分けして示す。

クリックで拡大

赤線(gR = 400gal)に注目すると、gQ が 200gal未満なら接触しないが、200gal以上では接触する。250galでも 0.248sec後に、22cm/secでズシンと衝突する。400galでは、0.176secにぶつかり、黒線(復元力ゼロ)とは 0.018secの差しかない。衝突速度は 45cm/secで、黒線の3割減になる。

全体的に:
・復元力が有効に働く範囲は、低 galに限られる
・大きい galでは、復元力ゼロとほぼ同じ時間で衝突する
・衝突速度が30~10%下がるぐらいの効果しかない

リニア唯一の長所「浮上し案内力も強いので、地震に強い」の実力は、この程度のものに過ぎない。このモデルは復元力を過大評価しているので、実際は黒線(復元力ゼロ)により近いはずである。

引き続く2投稿で、直下型地震(#12)と、離れた震源の巨大地震(#13)の場合に付き、どのような被害が起こり得るかを予測してみる。両者の違いは、緊急地震速報の前に揺れが来るか、速報を受けて減速してから揺れが来るかである。

ところで、低速浮上域(150〜200km/h)では、100galでもガリガリとなる。中間駅は明かり区間なので(神奈川県駅を除く)、横風が問題になりそうだ。減速し、トンネルを抜けたら強い横風に煽られてガリッ、終日運行休止とかなりかねない。発車時には、浮上直後に同様な懸念あり。強風が懸念される時は、各停は明かり区間でタイヤ走行とする運用が必要であろう。通過列車でも、台風などの暴風でガリッとなる可能性があり、その際は運休するか、明かり区間はタイヤ走行にせざるを得ないだろう。

 


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です