リニアの強引無理 #9:定員~800席/16両と少ない

本シリーズを#8でまとめた後も、重要情報がポツポツ判明している。それらを順次紹介していきたい。まずは、公共交通機関の経済性、環境性を語る上で、最も重要な数字・乗車定員から始める。

L0改良型で(右写真)、16両編成の最大定員は 888席(2×24+60×14)に減った。

以前は、最大1000席(=24×2+68×14)であった。改良型で、中間車のシートピッチを 88→98cmに伸ばし、17→15列に減らした結果である。新幹線の普通席シートピッチ 104cmに比べて、88cmはあまりにも狭くて不評だったのだろう。

888席や1000席と言っても、グリーン車も車掌室もトイレも車椅子スペースも全くない、あり得ない非現実的なケースである。では、現実的な座席数はどれくらいか?

新幹線では、最大1550席(=75×2+100×14)のところを、1323席(85.4%)で運用している。この比率をリニアに当てはめると、758席となる。

リニアは、トイレが少なくて済むのと(走行時間が短い)、大型旅行カバンなどの収納場所はL0改良型で少しは用意されたので、やや甘めに800席とする。

もう少し丁寧に数字を見よう。新幹線は、例えばN700Sの座席配置を見ると、トイレが7か所もある。リニアでは3ヶ所だけに減らすとする。N700Sの座席配置で、5、9、13号車のトイレだけを残し、1、3、7、15号車のトイレとユーティリティスペースは座席に戻すとすれば、1323+70=1393席(89.9%)となる。この比率をリニアに当てはめると、798席となる。

リニアは車体が小さいせいか、シートも狭く感じるそうである(シート横幅は新幹線より少し広いのにも拘わらず)。グリーン席は欠かせないと思われる。

グリーン車では、4×15列→3×13列にならざるを得ないだろう。これならシートピッチを113cmぐらいにできる(新幹線は116cm)。グリーン車を3両とすれば、グリーン席は117となり、トイレを一つ設置すれば、少なくとも席1列は減り、114席となる。グリーン席の比率は114/800=14.3%となり、新幹線の比率200/1323=15.1%並みになる。

グリーン席を設けるだけで、定員は66席減少する訳だ。さらにトイレ2ヶ所、車掌室、車椅子スペースなどが必要なので、800席という予測はそれなりの根拠があると言える。

当シリーズ #1に掲載した表を、定員800名として書き直すと:

リニア中央新幹線 東海道新幹線
総工費 11.5兆円 3,800億円
(現在の約1.66兆円相当、物価換算
最大編成 16両 16両
最大輸送人員(片道) 約8千人/時(予想) 約1.7万人/時(2010年3月時点)
乗車定員 800人(予想) 1323人
最大列車本数(片道) 10本/時 約13本/時

ここで総工費を11.5兆円としたのは、2021年に品川ー名古屋間の工事費が1.5兆円増の約7兆円と見直されいるので、その比率で増やした。

東海道新幹線に比べて、7倍の工事費を掛けて、運べる乗客数は半分以下である。見直しで工事費は27%増えたのに、定員は20%減ったのである。リニア方式のメンテナンスコストは、レール式よりずっと多く掛かると言われている。どうやって、事業として成り立ち得るのだろうか?

工事費見直しは、円安インフレ前であり、現時点で見積もればさらに2割は増加するのではないか。2027年開業断念をやっと認めたが、10年遅れの2037年でも完工しそうには見えない。それくらい工事ペースは遅い。工事が遅れれば遅れるほど、状況は悪くしかならない。最終的には、最近の大型土木工事で常態化しているように、当初見込みの2倍以上となるのではないか。

運賃は、以前の想定より少なくとも25%は上げたいはずだ。しかし、そうすると空路の客を奪いにくくなり、新たな需要増加を期待できない。新幹線と客を取り合うだけでは、収入は増えない。急速な人口減、出張よりオンライン会議の社会で、赤字を止められるシナリオはない。

JR東海は、もはや詰んでいるのではないか。無理やり完成しても、大赤字となり、税金注入で延命する不良会社になる。あるいは東海道新幹線の運賃を大幅値上げするとか、公共交通機関の役割を捨てて、日本国民に不利益をもたらすばかりになる。そういう未来しか見えない。

できるだけ早く中止することだ。投入済の工事費は、2兆円ほどに過ぎない(当シリーズ#10参照)。まだ傷は浅い。早く中止すればするほど、JR東海は早く立ち直れる。おそらくはリニア担当以外のJR東海社員が、いやリニアの実情をよく知っているリニア担当社員のほうが、最も中止を望んでいるのではないか。

8/15追加:新幹線は最大17本/時!

表にある新幹線の運転本数、約13本/時は控えめな数字である。本日時点のダイヤで、日曜祝日の東京駅発は17時台に15本もある。

つい先日の8/10には、18時台に東京駅から17本も発車したという。車両が新型に置き換わり、性能が劣る列車の混走がなくなった結果、ここまで増発可能になったという。

輸送能力の点で、リニアはますます見劣りする。新幹線の平日ダイヤは、最大13本/時で運用されているので、増発余力はまだ残っており、リニアの必要性はさらに低くなった。


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