安倍政権は日本が今までに経験したことのないダーティな政権である。辺野古移設でもあの手この手とあくどい手段を弄して強行している。
○ 10/14 沖縄防衛局が「私人」で不服請求、「身内」の国交相判断に
辺野古沖の埋め立て承認を沖縄県が取り消したことに対し、沖縄防衛局は行政不服審査法に基づき不服審査請求と取り消しの効力停止を国交相に申し立てた。しかし行政不服審査法は、第一条に明記されている通り「私人」を対象とし、沖縄防衛局は法の適用外のはずである。
第一条 この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを開くことによつて、簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。
政府と自治体が対立した場合、本来ならば第三者機関の「国地方係争処理委員会」に審査を求めるなどの手順となる。違法とされる強引なやり方をあえて取ったのは「簡易迅速な手続」が狙いと見られる:
「身内の判断で手早く済ませ、工事を再開して既成事実を積み上げようとの政府の考えが透けて見える」(成蹊大・武田真一郎教授)
○ 10/27 久辺3地区に新補助金交付へ、名護市の頭越し
久辺3区とは辺野古近くの辺野古、久志、豊原の3区(右上図)で、政府は3区の区長との懇談会を首相官邸で開き、地域振興の補助金を直接交付する新たな枠組みを創設すると伝えた。来年度からで、上限額は計3900万円と報じられる。あからさまな地元分断工作である。
菅官房長官は「3区は条件付き賛成」と説明したが、東京新聞が3区長に確認したところ、それぞれ否定している:
辺野古区「全然違う」、久志区「誤解だ、区が以前行った移設反対決議がまだ生きている」、豊原区「基地に来てほしいなんていう人は、誰ひとりいない」
○ 10/30 那覇支部裁判官の露骨な人事異動
11/17日、国は辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した翁長知事の処分を違法として、県に代わって国が処分を撤回する「代執行」を求める行政訴訟を福岡高裁那覇支部に起こした。
それに先立つ10/30日付で、この那覇支部長の人事異動があった。前支部長・須田啓之裁判官は宮崎地家裁所長に転出し、東京地家裁立川支部から多見谷寿郎裁判官が新支部長に着任。須田氏は「C型肝炎訴訟」や「原爆症認定訴訟」などで国の責任を厳しく指弾する判決を出しているのに対し、多見谷氏の判決は体制寄りとされる。上記行政訴訟を有利に運ぼうとする政府の意向を受けた人事と見られる。
○ 11/4 機動隊員約150名を辺野古に投入
米軍キャンプ・シュワブゲート前では、毎朝、工事に反対する大勢の人が抗議の声を発したり座り込みを続けている。反対する人々を強制排除するために、官邸の指示で警視庁の機動隊員約150名が沖縄に派遣され、11/4から投入された。彼らは1泊2万円の豪華「カヌチャリゾート」に(もちろん国費で)宿泊し、朝の強制排除が終了すると日中はのんびり過ごしているとのこと。
○宜野湾市長選挙、なりふり構わぬ事前運動
普天間飛行場がある宜野湾市は来年1/24日投票で市長選挙を控えており、現職の佐喜真淳市長(自民系)と志村恵一郎氏(翁長派)がすでに立候補表明している。
12/4 菅義偉官房長官とケネディ駐日米大使は共同記者会見を行い、普天間飛行場(全体で481ha)の南東側帯状の約4ha、牧港補給地区の南東側帯状の約3haなどの2017年度中返還を目指すと発表。これらはそれぞれ、1990年、1996年にすでに返還合意していたもので、タイミングを図り、異例の共同記者会見とすることでアピールを狙っている。
12/8 佐喜真市長は菅官房長官と首相官邸で会談し、「ディズニーリゾート」の同市への誘致について政府の協力を求めた。オリエンタルランドのコメントから、いかにも付け焼き刃であることが窺える:
「2日に佐喜真市長と島尻沖縄担当相から要請があったが、具体的な計画については白紙。現段階で話せることはない」
○ 10/7 島尻氏の沖縄北方担当相就任も、来年の参院選対応か
島尻氏は2004年那覇市議補選で民主党公認として初当選したが、05年に離党。07年の参院選補選に自民、公明両党の推薦で出馬して初当選。10年参院選では「沖縄県外移設」を公約に掲げて再選したが、その後選挙公約を撤回。沖縄北方担当相としての就任会見では「辺野古推進を強調」した。
来年の参院選を意識した人事と思われるが、注目が集まり資質を問われるような言動が多く報じられ、事前運動としてはかえって逆効果か。
公約を撤回と言えば、前知事の仲井眞氏は「辺野古移設反対」を公約に揚げて2010年に当選したのに、埋め立て承認を出してしまい、毒饅頭を喰ったと言われている。
○「普天間の危険除去のために辺野古が必要」がそもそも欺瞞
・海兵隊のグアム移転計画(pdf)で日米が合意している
これら状況からして、辺野古に新基地の必要性はない。これまでの政権は「無理に動かず、海兵隊の移転を待つ」のが本音であった。
訓練地として見ても、ベトナム戦争当時は気候や植生が近い沖縄は適地であったかも知れないが、現在は主な紛争地域が中東やアフリカなど乾燥地であるため、オーストラリアの基地がより活用されている。さして重要でもないのに、海兵隊は沖縄に広大な訓練地を持ち続けている(左図赤色部分)。グアム移転すれば大半が返還可能なはずである。
辺野古新基地は自衛隊が将来に亘って使うのが真の目的と思われるが、反発を懸念してかそのような説明は全くしていない。普天間の危険を利用して、グアム移転をあえて急がず、新基地を作ってしまうのが安倍政権の狙いではないか。