「重荷五十年」はじめに

この素朴な装丁の傷んだ本は、かなり前に父から貰ったものだ。ほとんど読んでいなかったが、あの時代への関心から、拾い読みを始めた。そして深く深く興味を持つに至った。

郷里のある公民館長が発起・編集した戦争体験記集で、父を含む22人が寄稿し、戦後50年目の1995年に非売品として発刊された。教育委員会は費用などを支援したものと思われる。なお、この自治体は合併により今は存在しない。

寄稿したのは平凡な市井の人たちであるが、そのほぼ全員がそれぞれ驚くような体験をし、生き抜いてきている。事実は小説より奇なり。ほとんど映画の世界である。大日本帝国の臣民達が、どのような艱難辛苦を強いられたかという、極めて貴重な記録である。

原本を文字認識させて電子ファイル化してあるが、著作権上からも公開できないし、決して読みやすいものではない。

22の体験記の概要を、筆者が解説するという形で、順次紹介したい。要点では原文を引用し、当時の状況をいろいろ補足し、適切な図を追加し、時には感想と推測を交えて、原本を読むよりは分かり易くなるよう努める。引用部分は全て、『引用』と表現する。

紹介する順番は、目次の順番とはかなり違う。最初の3話は例外として、おおよその年月順にしている。満州事変、日中戦争、太平洋戦争、満州からの帰国まで、15年間に亘っている。一部の寄稿者の名前は、原本でもイニシャルだけになっている。紹介では、全ての寄稿者名をイニシャルだけとする。

題名の「重荷を背負い歩き続けて五十年」は、戦後50年目に体験記を書き上げたことで、心理的な重荷をやっと下ろして気持ちを整理できた、という趣旨から採用されている。

2023年8月17日

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