リニアの強引無理 #3:リニアモーター制御と運転本数の制約

リニアモーターの駆動と制御

この論文に基づき、リニア新幹線の駆動と制御を簡単にまとめる。併せて、列車本数が最大10本/時の制約を考える。

出典 JR東海リニア特設HP

上図は先頭車両の連接台車部分で、超電導磁石(SCM=Super Conducting Magnet)や冷凍機が透視されている。片側4つのSCMはピッチ1.35mで配置される。軌道の推進コイルは2層で、0.9mピッチとなるようズレて配置され、3相交流で駆動される。

出典 電磁界情報センター

台車のピッチ(中間車両の長さ)は24.3m(=2.7m×9)である。軌道など全てが0.9mの倍数で作られているという。これら基本仕様はもちろん固定である。

推進コイルは168本×3相(435.6m)が一組として連結され、スイッチング素子を介して、168本が同時に駆動される(16両編成の列車長は 396.2m)。つまり435.6mごとに、3つの大電力スイッチング回路が配置され、「き電ケーブル」からの電力を選択的に推進コイルに供給する。(「饋電(きでん)」とは、動力用電力を変電所から軌道上に供給すること)

列車の位置と速度を交差誘導線で正確にモニターし、き電ケーブルに供給する3相交流の位相と周波数をリアルタイムに変化させて、加速や減速させる。速度500km/hのとき、周波数は51.4Hzになる。

平均的に25km毎に変電所を設けて電圧変換を行い、き電ケーブルを駆動する位相・周波数可変の大電力インバータ設備を配置する。これら変電所、インバータ設備、スイッチング回路の初期投資は莫大なものになり、維持コストも掛かるであろう。

列車本数の制約

一つの通電区間(〜25km)内では、(各方向に)1編成のみが走行出来る。停止距離のマージンを含めれば、列車間の距離は30km以上になるのではないか。品川—名古屋直通列車だけなら余り問題とならないが、各駅停車便が入ると強い制約になり、列車本数が限られてしまう。

上図は日経BPによる予想ダイアで、増発しても最大10本/時であり、国交省技術検討(p.  11)の記載と一致する。各駅停車は停まる毎に、8分遅れて、品川—名古屋間は 40+8×4=72分掛かる。新幹線は1駅停車毎にほぼ3分遅れるが、リニアはなぜ8分も掛かるのか?

500km/hへの/からの加速/減速に時間が掛かる訳ではない。加減速は十分に速い

リニアの構造ゆえの、通電区間以上の車間距離が必要なことと、軌道の切替に時間が掛かることが主要因と思われる。500km/hで走行中の通過列車にとっては、30kmの間隔でも、時間にすれば3分36秒に過ぎない。

ガイドウェイ分岐装置は巨大

ガイドウェイ分岐の説明がリニア見学センターHPにあるが、かなり大がかりなもので、切り替えに分単位の時間を要するのではないか。レール式のポイントのような訳にはいかない。

出典 日経BP

左写真は、上記の日経BP記事内にあるもので、リニア見学センターで撮影されており、分岐装置全体の大きさが分かる貴重なものである。

赤い塗料の部分が可動とすれば、7つに分割されており、1分割に15個の浮上・案内コイル(ピッチ 0.9m)が認められるので、全長は 94.5mとなる。最も手前の部分は約4mも水平に動かさねばならない。

リニアで直通と各駅停車とを混走させることが、いかに大変なことかが分かる。軌道の切替トラブルで、ダイヤの乱れが起こりやすいのではないか。各駅停車を追い越すこと自体に、強引無理がある。各駅停車を無くせば、もう少し増発余地はあるのだろうが、それは社会的に許されないだろう。


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