勤労とは、耐えて、頑張り、やりがいを見い出すものなのか?

【中1道徳教科書への横断的コメント】

教材の中でも、際だって偏った価値観を呈しているのが「勤労」である:
(○:ポジティブ、▼:ネガティブ、・:ニュートラル評価; 矢印は注記)

▼日本文教1・14「私は清掃のプロとなる」  ←清掃/新津春子さん
▼日本教科書1・p. 120「仕事と心」     ←清掃/新津春子さん
▼東京書籍1・10「新しいプライド」     ←清掃/60才パート
・学研教育みらい1・1「掃除の神様が教えてくれたこと」←清掃/TDL、正社員
▼学研教育みらい1・33「明かりの下の燭台」 ←東洋の魔女のマネージャー
▼廣済堂あかつき1・27「午前一時四十分」  ←84才が徒歩で新聞配達/集金
・学校図書1・15「一房のぶどう」      ←全盲のおじさんはぶどう農家

8社中4社が清掃の仕事を題材とし、うち2社は「新津春子さん」を取り上げている。新津さんは中国残留日本人孤児の娘で、一家で日本に「帰国」したものの、言葉などでたいへん苦労し、清掃ぐらいしか仕事がなく、それでも本人は健気に努力してカリスマ清掃員と呼ばれるまでになる。
「新しいプライド」は、60才でパートを始め、夫もリストラ(?)でアルバイトと、妙にリアルな貧困日本を設定している。 「明かりの下の燭台」は、絶対的上司の監督からの要請で、渋々マネージャー役を引き受け、それでも頑張る姿を描く。 最後の2つは、注記からも判るように、極端な厳しい状況設定で、それでもやりがいを持って元気に頑張る姿を描く。

これらを読む限り、こう受け取るより他はない:

– 日本人の半分ぐらいは清掃の仕事をしています。
– 与えられた仕事をとにかく頑張りましょう!
– 年老いても障害があっても頑張って働きましょう!
– そうすればやりがいを持てます。

最近、日本の若者が未来に希望を持てなくなっているとの記事を目にするが、その理由の一つが分かった気がする。これら教材はいったい何を狙っているのだろうか? 若者に未来を暗く厳しく感じさせ、日本を衰退させ「亡国」に追い込もうとする、「某国」の陰謀ではないかと、皮肉を言いたくなるほどだ。マイナス教材である。夢も希望も、あまりになさ過ぎる。

勤労の教材で、ポジティブ、ニュートラル評価も少しはある:

○光村図書1・19「私が働く理由」
・学校図書1・9「クリームパン」  ←パン屋の父は独自の味を創る
・東京書籍1・22「看護する」    ←看護師の忙しい日常

光村図書のは、オリジナリティのある仕事、付加価値の高い仕事など、男女4人ずつを紹介し、幅広い可能性を感じさせる。他社のマイナス教材に比べると、ホッと救われる思いで読める。

 


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