7/22 日本政府は唐突に、東シナ海の中国ガス田開発の写真を公開し、海洋プラットホームが2013年から一気に増えて4→16本にもなっていると明らかにした。マップは最下段に掲載。
衆院の強行採決で支持率が下がったタイミングのため、中国の脅威を煽る世論操作とされるが、とにかく中身を見てみよう。
論点はガス田と軍事利用の2点があり、ガス田としての見方はほぼ一致している:
- 埋蔵量少なく、日本がやっても採算合わない
- 海底パイプラインを直結で引いている中国は採算合う可能性あり
- 中国の排他的経済水域内、つまり日本が主張する中間線を守っている限り、日本が文句を言っても通らない
- 日本側の埋蔵ガスが吸い取られている可能性はあるが、国際的にこの言い分は通らない(フセインがクェートに侵攻した理由の一つが、両国にまたがる油田をクェートが勝手に採掘し始めたからとのことだが、この言い分は認められていない)
ガス田として魅力がないと(日本側には)思われるのに、海洋プラットホームを16本も建造したのは軍事転用が目的だ、軍用ヘリを配備し、ソナーやレーダーを装備すれば「前進基地」になるとの脅威論を御用メディアが一斉に書き立てる。しかし以下の反論点から脅威論は根拠が薄い:
- そもそもソナーやレーダーを備えた中国の軍船が(自衛隊と同じく)東シナ海を自由に動き回っているのだから、固定ポイントが新たに出来てもあまり意味がない
- 海上プラットフォームはレーダーにはっきり映る大型の固定目標となり、攻撃に対して極めて脆弱、簡単に破壊できる
- ヘリ甲板も1機分だけでは軍用にはほとんど役立たない、少なくとも数機を常駐、荒天に耐えられる格納庫、整備施設、燃料タンクなどに加えて、防御用対空ミサイルや警備兵も必要で、はるかに巨大な櫓が必要
- 海上にレーダーを固定設置しても探知距離は限られる、標高h(m)のレーダーから見える水平線は3.6√h(km)、高さ50mでも25km先までしか見えない、超低空飛行できる戦闘機なら容易に回避できる
- 空の監視は早期警戒機が主体、超高空(9000m)から半径450kmほどの範囲であらゆる飛行物体を探知する、写真右下は自衛隊の早期警戒管制機E-767(B-767を改造したもの、味方の飛行機の管制・誘導機能をも備える)、中国はこの分野では遅れている
安倍首相は「東シナ海の境界未画定海域で一方的に資源開発が行われている」と言うが、中国は日本主張の中間線を守っており、国際的基準からしても日本側の文句は通らない。自衛隊はガス田の開発状況を常時監視しており、日本政府はこれまで特に取り沙汰しなかったことからして、さほど脅威とは見ていない事が分かる。いずれにせよ、安保法制(=米国に随伴して自衛隊を海外で戦争させる)とは何ら関連が認められない。