辺野古新基地は不要:普天間は返還可能

  • Henoko_airview
    引用元 http://hirotsu-motoko.com

    海兵隊は抑止力ではない

  • 沖縄は海兵隊の訓練地の一つに過ぎない
  • 米国は海兵隊を再配備/リストラしたい
  • 訓練地が仮想敵国に近いのはマズい
  • 東南/南アジアに重点配備したい
  • 米側本音は、沖縄の民意尊重で新基地なしでも可

普天間基地(飛行場)は米軍海兵隊が使用している。基地移設問題を考えるにはまず海兵隊の機能・任務を理解する必要がある。
海兵隊と言えば、海からの上陸作戦、敵地にパラシュート降下、市街戦で住宅を一軒づつ制圧とかの映画で見慣れたシーン、いわゆる地上戦を想い起こす。実際の任務もそのようなものであることが、防衛省資料「在日米軍及び海兵隊の意義・役割について」(2010/2、以下「意義・役割」と略記)の17ページからも確認できる。

この資料は、当時の鳩山首相が「最低でも県外」を模索していた時期に、防衛省政策会議という与党向けの説明・意見交換会で使われている。民主党政権時代は情報公開が進んでいたことの好例であろう。

● 海兵隊は抑止力ではない

海兵隊は「高い機動性と即応能力」を謳っている。これは任務の一つである在外公館など海外拠点の「警備」には役立つだろうが、即応はあくまで「自衛」のための戦闘に限られる。いわゆる「戦争」行為は、陸海空軍と同じく、議会の承認が必要である。

離島が他国に占拠とかの有事の際、もちろん自衛隊は即応するはずだが、海兵隊が加わることは上記からしてあり得ない。もし米軍が加わるとするなら、まず議会の承認、少なくとも数ヶ月の作戦準備の後、海軍が補給路を封鎖、空軍が徹底的に空爆して、最後に上陸奪還の手順となるはずだ。海兵隊の任務は危険性が最も高いので、犠牲を最小化するために入念な準備をして、最後に登場することになる。

もし無謀にも真っ先に海兵隊を投入して犠牲を出せば、米大統領の政治生命は終わるだろう。海兵隊の即応能力は米国海外拠点の「警備」と「災害救助」には有用だが、「戦争」ではそもそも即応することはなく数ヶ月以上の時間があるので、世界のどこに居ても集結する余裕がある。沖縄に大部隊が常駐する必要性はさらさらない。

なお(あり得ないことだが)もしも尖閣諸島を巡って中国と紛争が起きたとしても、米国議会は米軍が戦闘に加わることを承認しないと予想する。かねてから領土係争があるちっぽけな無人島のために、米国軍人が血を流すことを米国世論は全く認めないだろう。米国政府や議会は中国と本格戦闘になることを全力で回避しようとするだろう。中国との経済的結びつきや軍事バランスを考えれば、日本に多少の不義理であろうとも、尖閣諸島のために米国が戦争する選択肢はおおよそ考えられない。

なぜ中国との紛争があり得ないと思うか? もし中国から仕掛けると、日本より遙かに中国の方が不利益が大きく、国家崩壊のリスクがあるからだ。中国政府は1932-45の大日本帝国ほどのバカでもキチガイでもない。

意義・役割」10ページには:

自衛隊が保有しない能力・アセットをもって「抑止力」を構成・提供。
→ ・核戦力
  ・打撃力(原子力空母、爆撃機、巡航ミサイル等)
  ・情報収集のための衛星、無人機等

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との記載があり、海兵隊は抑止力に含まれていない。さらに27、28ページに海兵隊に関連して抑止力の文字が見えるが、直接的な表現を避けた屈曲した記述になっている。実は海兵隊の大部分はグアム/本土に移転する計画であり、防衛省が抑止力と言いたくても言い切れない実態がある。

海兵隊は沖縄で何をしているのか? 練度維持の訓練のためである(「意義・役割」19ページ)。沖縄は世界各地にある多数の訓練地の一つに過ぎない(同21ページ)。訓練地としての沖縄の重要性は近年下がっていると言われる。ベトナム戦争当時は気候や植生が近い沖縄は最重要であったし、そもそも発進基地であった。現在は主な紛争地域が中東やアフリカなど乾燥地であるため、オーストラリアの基地がより活用されるようになっている。さして重要ではなくなったのに、海兵隊は沖縄に広大な訓練地を持ち続けている(右図赤色部分)。

● 海兵隊の再配備とリストラ

海兵隊のグアム/本土移転計画は別の防衛省資料(2016/3)に最新状況がまとめられている。また米国議会調査局(CRS)発行の「The U.S. Military Presence in Okinawa and the Futenma Base Controversy」(2016/1)でも冒頭に記述されている:

The current plan is to relocate 9,000 marines (and their dependents) from Okinawa, deploying 5,000 to Guam, 2,500 to Australia on a rotational basis, and 1,500 to Hawaii as soon as the receiving facilities are ready.

現在の計画は、沖縄から海兵隊員9000名(とその家族)を移動し、グアムに5000名、オーストラリアに巡回駐在で2500名、ハワイに1500名を、受け入れ施設が完成ししだい配備する。

沖縄の海兵隊の定員は18000名だが、実際に駐留しているのは12000名ほどである。9000人移動すれば、人員数は1/4となり、それだけで基地は大幅縮小される。「意義・役割」26ページに記載されているように:

普天間飛行場(約481ha)→返還

(1)ヘリ基地機能→大浦湾からキャンプシュワブ南沿岸部の地域に代替施設を建設
(2)空中給油機の基地機能→岩国飛行場に移駐(ローテーションで鹿屋基地やグアムに展開)

(3)緊急時の基地機能→築城・新田原飛行場等

キャンプ・シュワブにヘリパッドを整備し、岩国基地への移転と組み合わせるだけで、普天間は返還できる。人員が1/4に減少するのに、辺野古沖を埋め立てて2本の滑走路を持つ巨大な基地を作るべき必要性は全く説明されていない。

米国は海兵隊の再配備をどう考えているのだろうか? ランド研究所は米国議会の依頼で米軍の海外基地配備につき包括的な研究を行い、487ページもの長大な報告書(2013/4)にまとめている。目的は『抑止力と同盟国への安全保障を維持しつつ、かつ軍事費をできるだけ削減し、より重視すべき地域へ再配備する』ことである。背景には、アフガニスタン/イラク戦争で膨張した軍事費とリーマンショックにより米国政府の財政赤字の急速な拡大があり、オバマ政権は軍事費抑制を強く打ち出している。

この報告書はあまりに長大過ぎるが、これを紹介した記事「RAND study questions heavy US Marine presence on Okinawa」には端的な要約がある:

The study, commissioned by Congress as part of the 2012 Defense Authorization Act, concluded that most of the US Marines now based on Okinawa could be relocated to California without any appreciable decline in response time to a crisis. 
Specifically, the report suggested that only the 31st Marine Expeditionary Unit (MEU), a highly-trained, “special operations capable” group, remain on Okinawa. The 31st MEU is the only one of the Marine Corps’ seven MEUs to be based overseas. It consists of some 2,500 Marines, with a dedicated “Amphibious Ready Group” of naval vessels based at Sasebo.

沖縄に現在駐留中の海兵隊の大半をカリフォルニア州に移転しても、有事への対応時間はほとんど変わらない、と本研究は結論づけている。特に、第31海兵機動展開隊(31MEU、高度に訓練され特殊作戦遂行能力あり)だけを沖縄に残せばよいと示唆している。31MEUは、7つの海兵機動展開隊(MEU)のうち、唯一海外(沖縄)に駐在している。兵員は2500人ほどで、佐世保基地の海軍部隊と組んで、両用即応グループを成す。
(訳注:有事には海兵隊は佐世保基地に移動し、海軍の対応部隊と合体し、5000人規模の出撃可能な上陸部隊が編成される。この準備には1ヶ月ほどを要する)

沖縄にあるヘリなどの輸送機材や武器資材などは、31MEUの2500人分しかない。それ以上の人員が居ても、機材/資材をグアムから船で送ったり、本国から延べ数百往復の輸送機で送って充当するしかない。戦闘準備は輸送で制約されるので、初めの人員配置はほとんど関係ないとの説明がある。であるなら、人員は本国駐在させた方が、コストは低い。

別の論点は、北朝鮮のミサイル攻撃の脅威が増しており、韓国や日本に駐留する米軍部隊は必要なものだけに限定すべしとの主張である。朝鮮戦争はまだ「休戦中」であり、北朝鮮と米国は依然として敵対している訳で、日本領土内とはいえ米軍基地を先制攻撃する可能性は否定できない(ただし、それは日本をも巻き込む全面戦争を意味するので、現実的には考えにくい)。人員だけでなく、大量の兵站資材も格好の攻撃目標になり得る。

米国の軍事戦略は従来の欧州と中東主体から、アジア重視に転換しており、特に東南/南アジアを強化しようとしている。中国の南シナ海およびインド洋進出に対抗するためで、オーストラリアの基地はこの目的で強化されている。本当はASEAN諸国内で空軍か海軍の基地を持ちたいはずだが、どの国も提供にまでは踏み込んではいない。南シナ海に比べれば、東シナ海は日本の存在ゆえにさほど深刻ではなく、米軍としては手を抜けると考えているのではないか。

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左に、海上自衛隊幹部学校の論文(2012/5)からグラフ1を転載した。米国防予算の推移を示しており、アフガニスタン/イラク戦争のために、国防予算が2倍超に膨れあがっている。約70兆円(2010年)にまで達して、やっと削減し始めたが、米国政府の財政赤字は危機的に膨らんでいる。

テロとの戦いは、米国を守るどころか真逆の方向で、財政赤字を招き米国を大きく衰退させてしまってUSMilPrsnlいる。国防ではなく、「国亡になっている。「戦争したがるのは亡国奴」は洋の東西を問わず真実である。軍需産業だけが儲かっても、国家が衰退しては何の意味もない。

さらに左に、上記論文から表3を転載した。米軍の兵員数削減計画が示されている。海軍・空軍に比べて、陸軍・海兵隊の削減率が目立つ。「陸軍・海兵隊は実戦になると犠牲者が多いが、平時の抑止力としてはあまり有効ではない」のが理由である。陸軍や海兵隊員を大量投入するような地上戦は、もはや起こりにくいし、やりたくもないという米国政府の意思の表れであろう。

● 米側本音は、沖縄の民意尊重で新基地なしでも可、早く再配備したい

米国側資料を見ると、沖縄の基地に反対する民意や地方自治(知事、議会)の動きについての記述が意外に多いことに気付く。ランド研究所の報告書では、当時の仲井眞知事が埋め立て承認をまだ出していなかった時期のため、辺野古移転に悲観的な見通しを示している。

また米国議会調査局発行の「The U.S. Military Presence in Okinawa and the Futenma Base Controversy」は、沖縄の政治情勢、基地反対の動きが主題で、真っ正面から取り上げている。沖縄戦から始まる歴史的背景、沖縄に集中している米軍基地負担、仲井眞前知事が公約に背いて埋め立て承認したため落選、翁長現知事は全職務権限を活用して反対闘争中、名護市長もとことん反対、工事現場での反対活動にも触れるなど、詳細で客観的に記述されている。米軍の再配備に関心のある米議員がこれを読めば、さらに現在は「和解」で工事中断していることを知れば、辺野古移転は非現実的だと確信するに違いない。

もちろん米国政府の公式的な立場は「辺野古移転」であり、国と国の約束なのだからそう言うしかないだろう。しかし識者の本音は明らかに違う。集団的自衛権行使の容認を勧めたことで知られる第3次アーミテージ・ナイ・レポートには、普天間基地に関して次の記述がある:

The alliance has spent far too much high-level attention over the past decade on the details of the disposition of U.S. forces on Okinawa. The result is that a third-order issue, the Marine Corps Air Station at Futenma, has absorbed time and political capital that would have been better invested in planning for an optimal structuring of forces for the coming decades.

翻訳は省略するが、普天間の海兵隊基地問題を「a third-order issue」としているのは驚きである。「そんなつまらない問題はさっさと片付けて、戦力の最適配備を早く計画しようぜ!」と言っているのだ。真意は著者の一人であるジョセフ・ナイ氏がインタビュー記事:『ナイ教授「辺野古移転を強行すべきではない」日本列島各地への分散配置を検討せよ』で語っている:

私は、日本列島各地の複数の基地に米軍を分散配置することを検討するよう提案する。そうすることで基地の脆さを軽減し、同時に、日本の国旗を掲げた日本の基地でありながら米軍が交代で駐在していることを明確に示すことができる。三沢飛行場が好例だ。10年先を見越して、米軍と自衛隊が共同で行動できる、同盟関係の継続、米軍の強いプレゼンスの継続をどうやって確保するかを考えれば、長期的な解決策として、沖縄に固定させた大規模基地の考え方から離れることがどうしても必要になる。

ナイ氏は、仮想敵国からのミサイル攻撃の懸念から「在沖基地は脆弱」と主張し、2011年時点ですでに「海兵隊を県内で移設する現行計画が沖縄の人々に受け入れられる余地はほとんどない」と分析し、沖縄駐在海兵隊のオーストラリア移転を提言したことでも知られている。

● 辺野古新基地が欲しいのは日本政府/防衛省だけ

米軍の実際の動きや識者の見解を知れば、米国政府は明らかに辺野古新基地を欲してはいない。そんな兵力を配置する計画がそもそもないのだから。むしろ沖縄の民意に逆らって辺野古新基地を作ってしまうと、米軍全体への反感が拡がるのではないかと恐れているように見えるし、時間の無駄と思っている。

日本政府は、海兵隊の移転を口実に利用し、米国側を困惑させつつ、真の意図を隠したままV字滑走路2本の広大な辺野古新基地を作ってしまおうとしている。いったい何のためにこんなものが必要なのだろうか?


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